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【水死】

 *関連項目→〔入水〕

★1.男が愛人を水死させる。

『陽のあたる場所』(スティーヴンス)  貧しい青年ジョージ(演ずるのはモンゴメリー・クリフト)は、伯父が会社社長として成功したため、その工場に雇われる。彼は女工アリスを妊娠させるが、その一方で、名士の令嬢アンジェラ(エリザベス・テーラー)と知り合い恋仲になる。ジョージはアリスを邪魔に思って、湖にボート遊びに連れ出し、突き落として殺そうと考える。しかし決行できないうちにボートが揺れ、二人とも水中に落ちる。ジョージは岸に泳ぎつき、アリスは水死する。裁判で、ジョージには殺意があったと見なされ、彼は電気椅子へ送られる。

*夫が、湖で溺れる妻を見殺しにする→〔宝を失う〕4の『新月』(木々高太郎)。

*夫が妻を湖で水死させようと考えるだけで、実行はしない→〔空想〕2aの『ロリータ』(ナボコフ)。

★2.夫が妻を水死させようとして果たさず、後にその妻と再会し、ふたたび結婚する。

『今古奇観』第32話「金玉奴棒打薄情郎」  貧乏書生の莫稽は、大金持ちの乞食の親方の娘玉奴(ぎょくど)と結婚し、親方の財力のおかげで出世する。そうなると莫稽は、玉奴が乞食の娘であることを恥じ、船から川中に突き落とす。玉奴は、莫稽の上司である許公に救われ、事情を知った許公は、莫稽に「我が娘の婿になれ」と言って招く。莫稽は「上役の娘婿になれる」と喜び、花嫁と対面すると、玉奴だったので驚愕する。玉奴は莫稽を「薄情者」とののしるが、怒りを収め、あらためて結婚して、以後は仲むつまじく暮らした。

『英草紙』第2篇「馬場求馬妻を沈めて樋口が婿と成る話」  貧乏浪人馬場求馬は、大金持ちの乞食頭の娘お幸と結婚する。しかし仕官が決まると、求馬はお幸の身分を恥じ、船から湖中へ突き落とす。やがて求馬は家老樋口に目をかけられ、「娘の婿に」と望まれる。婚礼の日、花嫁と対面すると、お幸だったので求馬は驚く。お幸は水死するところを樋口に救われたのであり、彼女は再会した求馬をののしるが、恨みを捨て、あらためて婚儀を行なう。

*男が、刃物で殺したはずの女と再会し、結婚する→〔運命〕1bの『今昔物語集』巻31−3、『続玄怪録』。

★3.夫が妻をボートに乗せて湖を渡る。夫は、往路では妻を水死させようとし、復路では妻を助けようとする。

『サンライズ』(ムルナウ)  村の男に愛人ができ、愛人は男に「妻を殺せ」と勧める。男は妻をボートに乗せて湖を渡り、妻を突き落として水死させようと思いつつ、決行できないまま対岸の町へ着く。おびえる妻の姿を見て男は心を入れ替え、妻に許しを請う。夫婦は和解し、村へ帰る途中、嵐が来てボートは転覆する。男は岸へ泳ぎ着くが、妻は行方不明になる。男は村人たちに助けを求める。村人たちは船を出して妻を捜し、救助する。

★4.男が、水死したはずの女と再会する。

『与話情浮名横櫛(よわなさけうきなのよこぐし)序幕「木更津浜辺の場」〜3幕目「源氏店妾宅の場」  与三郎は赤間源左衛門の妾お富と密会し、それが知れて全身に刀傷を受ける。お富は海に身を投げるが、和泉屋多左衛門に救われる。三年後、ゆすりたかりをして暮らす身の上となった与三郎は、仲間の蝙蝠安と連れ立ち、多左衛門の妾宅を訪れて小遣い銭を無心する。ところが、そこにいたのは海で死んだはずのお富で、二人は思いがけぬ再会をする。

★5.賊によって水死させられたはずの人物が無事に陸に上がり、賊と対面する。

『日本霊異記』上−7  舟人たちが、三谷寺の弘済(ぐさい)禅師の所持する金(こがね)や丹(に=仏像のための顔料)を奪い、禅師を海に落とし入れた。禅師は、かつて放生した亀に救われ、亀の背に乗って無事に海岸へたどり着く。賊たちは金や丹を三谷寺へ売りに行くが、思いがけずそこに禅師がいたので、進退きわまる。禅師は賊たちを憐れみ、刑罰を加えなかった。

『日本霊異記』下−4  陸奥へ行く船の上で、婿が舅を海に落とし入れた。舅は僧であり、『方広経』を読誦したおかげで海に落ちても無事だった。舅は陸奥へ向かい、婿が舅の法事をしている場に行き合わせる。婿は舅を見て、恥じて隠れた。

『博多小女郎波枕』(近松門左衛門)上之巻  毛剃九右衛門一味は、密貿易の現場を見た商人惣七を海へ投げこむ。惣七は伝馬船の中へ落ちて命拾いし、馴染みの遊女小女郎のいる奥田屋へ行く。毛剃一味も奥田屋に上がりこんで豪遊し、思いがけず毛剃と惣七は対面する。

『歴史』(ヘロドトス)巻1−24  竪琴弾きのアリオンは、海上でコリントスの船員たちに金を奪われ、強要されて海に身を投ずる。アリオンは海豚(いるか)に救われ、コリントスのペリアンドロスのもとへ身を寄せる。やがてコリントスに来た船員たちはペリアンドロスに呼び出され、そこでアリオンと対面して仰天する。

 

※水死とは逆の「水生」→〔逆さまの世界〕9の『地獄八景亡者戯(じごくばっけいもうじゃのたわむれ)』(落語)。

 

 

【彗星】

 *関連項目→〔星〕

★1.彗星が女性の姿で地上へ降下する。

『子不語』巻7−179  孛星(はいせい。彗星)は女身で、性質は淫蕩である。雨乞いをする道士が、孛星が田に降りる日を待つ。その日、田にいる白衣の女に、童子が三つの符を投げつけると、女は裙(スカート)を捨て、上衣を脱ぎ、全裸になって狂奔した。道士の「雨よ降れ!」の一喝で女は仰臥し、陰部から雲気がたちのぼって、五日間、雨が降った〔*符を用いて某家の嫁を孛星の身代わりとし、裸にして雨を降らせた、との解釈もある〕。

*星の化身の女が地上で水浴する→〔星の化身〕1の『捜神記』巻4−2(通巻72話)。

*女性の裸身が雨を呼ぶ→〔雨乞い〕2の『夜叉ケ池』(泉鏡花)。

★2.彗星が地球に衝突する。

『ディープ・インパクト』(レダー)  巨大な彗星が地球に接近し、このままでは衝突する。宇宙船メサイア号が彗星まで飛び、核爆弾を彗星に埋めて爆発させ、軌道を変えようとする。しかし彗星は大小二つに割れただけで、なおも地球へ向かって来る。小彗星は大西洋に落下して大津波を引き起こし、多くの都市を破壊した。メサイア号は核弾頭もろとも、大彗星に体当たりする。大彗星は爆発して無数の小片になり、人類は滅亡を免(まぬが)れた。

『ムーミン谷の彗星』(ヤンソン)  おさびし山の天文台の学者が、「四日後の八月七日午後八時四十二分に、彗星が地球に衝突する。四秒遅れるかもしれんが」と警告する。ムーミン一家と仲間たちは、森の洞窟へ避難する。八月七日午後八時四十二分四秒、真っ赤に燃える彗星が地球へ突っ込む。大きな音がし、地面がふるえ、やがて静かになる。スナフキンが「地球は壊れなかった。彗星は、しっぽで地球をかすっただけだ」と言う。

★3.凶兆と見なされる彗星も、喜びの心で見れば、輝かしいものに見える。

『戦争と平和』(トルストイ)第2部第5篇  ナターシャはアンドレイ公爵との婚約が破棄され(*→〔妻〕5)、悲しみの日々を送っていた。ピエールがロストフ家を訪れて、ナターシャを慰めるうち、彼の心の中にナターシャへの強い愛情がわきあがる。帰宅するピエールは、冬の夜空に、一八一二年の巨大な彗星が輝くのを見る。世界の終焉を予言すると言われた彗星だが、ピエールには、この彗星こそ、人生の新たな意味を見出した自分の心に相応するもの、と感じられた。

★4.彗星は、箒星(ははきぼし=ほうきぼし)とも言う。

『天稚彦草子』(御伽草子)  夫・天稚彦(天稚御子)を捜して、妻が天へ昇る。箒(ほうき)を持つ人が出て来たので、「天稚彦のいらっしゃる所はどこでしょうか?」と尋ねると、その人は「私は知りません。この先で出会う人に聞きなさい。私は箒星(ははきぼし)と申します」と言って、通り過ぎて行った〔*妻はその後、「すばる星」や「玉の輿に乗る人」に出会い、天稚彦の御殿へたどり着く〕。

★5.地上の妖精たちが、天界の「ほうきぼし」になった。

『チョコレット』(稲垣足穂)  人間が妖精たちを尊敬しなくなり、無視するようになったので、妖精たちは天へ昇り、赤・青・緑など色とりどりで、傘や棒や柄杓など形も様々な「ほうきぼし」になった。そのうちの一つが、ある時、小児の姿で地上へ降り、硬い小さなチョコレットの中に入った。鍛冶屋が鉄槌でチョコレットをつぶすと、ピカッと光るものが、鍛冶屋の屋根を二つに割って、真上へ抜けて行った。

*尾のないホーキ星→〔尾〕5の『一千一秒物語』(稲垣足穂)「黒猫のしっぽを切った話」。

*ホーキ星と思ったら赤鉛筆→〔夢で得た物〕2の『一千一秒物語』(稲垣足穂)「赤鉛筆の由来」。

★6.彗星が惑星(金星)になった。

『衝突する宇宙』(ヴェリコフスキー)  紀元前二千年頃、木星から一つの彗星が放出され、楕円軌道を描いて太陽系内を巡り始めた。紀元前十五世紀、彗星は五十年を隔てて二度、地球に接触し、暴風・地震・洪水などの大災害をもたらした。世界各地の神話で語られる天変地異の物語は、この時の記憶だ。紀元前八世紀、彗星は火星と衝突したために、軌道が楕円から円形に変わり、地球と水星の間の空間を回る惑星になった。これが現在の金星である。

 

※カエサルの魂は箒星になり、神と見なされた→〔神になった人〕3の『変身物語』(オヴィディウス)巻15。

 

 

【水没】

 *関連項目→〔洪水〕

★1.村や町が水没する。

イスの都の伝説  五世紀頃、ブルターニュにイスという都が栄えていた。イスは海面より低いので堤防で囲まれていた。ある夜、悪魔に誘惑された王女アーエスが堤防の水門を開け、満潮の海水が街に流れこんで、イスの都は海底に没した。しかしイスは滅びることなく、水底で別の生を続けている。波の静かな日には、海の中から聖堂の鐘の音が聞こえてくる。

『捜神記』巻13−8(通巻326話)   始皇帝の時代に「城門に血がつくと、城は沈んで湖になる」との童謡がはやった。老婆が心配して、城門を毎朝見に行く。門番がわけを聞き、犬の血を城門に塗りつける。老婆は逃げ去り、町は湖になった〔*『述異記』(祖冲之)5「石亀の血」に、門番が城門の礎石の石亀の眼に朱を塗り、町が水没する、との類話がある。『宇治拾遺物語』巻2−12の類話では、山の卒塔婆に血を塗って、山崩れが起こる〕。

『捜神記』巻20−7(通巻455話)  龍の化身の老人が「町の東門にある亀の石像の眼が赤くなったら、町は陥没する」と老婆に教える。子供が老婆をだまそうと、亀の眼に朱を塗ったので、老婆はあわてて逃げる。青い着物の子が「僕は龍の子だ」と告げ、老婆の手を引いて山に登る。町は陥没して、湖になった。

『夜叉ケ池』(泉鏡花)  萩原晃は鐘楼守となり、毎日三度鐘を撞いて、夜叉ケ池の龍神を鎮める(*→〔鐘〕4)。村人たちが雨乞いの儀式のために、萩原の妻百合を辱めようとするので(*→〔雨乞い〕2)、百合は鎌で胸を突いて死ぬ。怒った萩原は、時刻になっても鐘を撞かず、鎌で綱を切って撞木を落とす。たちまち夜叉ケ池から津浪が起こり、村は水没する。萩原は鎌で喉を斬って倒れ伏す。

『呂氏春秋』巻14「孝行覧・本味」  ある女が、伊水のほとりにいた時に身ごもった。神が女に、「臼が水を噴き出したら、東に向かって走れ。ふりかえってはならぬ」と夢告する。翌日、臼が水を噴き出したので、女は東へ逃げる。十里走ってふりかえると、女の村は水没していた。女は空桑(うつろのある桑の木か?)に化した〔*→〔禁忌(見るな)〕2の『創世記』第19章、ロトの妻が塩の柱に化す物語と類似する〕。

*ユピテル(ゼウス)に宿を貸さなかった家々が、沼の底に沈む→〔旅〕2aの『変身物語』(オヴィディウス)巻8。

*太陽を招き返した長者の田が、池になる→〔扇〕4の湖山長者の伝説。

*悪行をはたらいた伯爵の城が、湖に沈む→〔蛇〕6の『ドイツ伝説集』(グリム)132「ゼーブルク湖」。

*人に育てられた蛇が成長後、町を水没させる→〔蛇息子〕3の『捜神記』巻20−15(通巻463話)など。

★2a.大陸が水没する。

『海底軍艦』(本多猪四郎)  一万二千年前、太平洋上にムウ大陸があり、強大なムウ帝国が世界を支配していた。しかし呪われた運命により、ムウ大陸は一夜にして海底に没した。ムウ帝国は滅びることなく、海底王国を築いた。二十世紀の半ばを過ぎた頃、彼らは再び世界を支配下に置こうと、地上への侵攻を開始する〔*旧日本海軍の神宮司大佐(演ずるのは田崎潤)が建造した海底軍艦が、ムウ帝国の中枢を撃破して、世界を救った〕。

『コクーン』(ハワード)  一万年前、アンタレア星人が地球を訪れ、アトランティス大陸に基地を造った。しかしアトランティス大陸は突如水没したため、脱出できなかった宇宙人二十体ほどが、繭(まゆ)に入って海底に沈んだ〔*二十世紀になって、アンタレア星人は再び地球を訪れ、海底の繭を故郷の星へ運ぼうとする。ところが事故で二体が死んでしまい、アンタレア星人は繭を宇宙船に載せることの危険を悟って、また海底へ戻した〕→〔宇宙人〕4

*アトランティス大陸のアレリアン国→〔時間旅行〕3dの『王様のご用命』(シェクリイ)。 

★2b.日本列島が水没する。

『日本沈没』(小松左京)  一九七×年。未曾有の地殻変動が二年以内に起こり、日本列島全体が水没する可能性が高くなった。政府は、一億一千万の日本国民を海外へ移住させるべく、船舶・航空機を手配し、諸外国へ移民受け入れを要請する。皇室はスイスへ移すこととなった。火山の噴火、巨大地震、大津波などの頻発で多数の犠牲者を出しつつも、七千万人近くが、沈み行く日本列島から、かろうじて脱出できた。祖国を失った日本人たちは、別れ別れになって他国へ移住し、過酷な未来を生きねばならない。

*→〔原水爆〕2の『神と野獣の日』(松本清張)は、水爆による東京壊滅の物語であるが、皇室に関する記述は一切ない。 

★3.全世界が水没する。

『ウォーターワールド』(レイノルズ)  未来の地球は、陸地がすべて水没し、海ばかりの世界になっていた。人々は海上に浮遊都市を作って居住し、真水と土は高値で取引きされた。海洋を旅する男マリナー(演ずるのはケヴィン・コスナー)が、浮遊都市の人々とともに気球に乗り、伝説の陸地「ドライランド」を発見する。そこは緑の山と清らかな水に恵まれ、馬の群れが駆ける豊かな土地であり、皆は歓喜する。しかしマリナーは陸地よりも海洋の暮らしを選び、海の彼方へ去って行った。 

★4.水没した町の中で暮らす。

『水中都市』(安部公房)  「おれ」の父が魚に化した(*→〔魚〕1)後、町は水中に沈んだ。「おれ」たちは空を飛ぶごとく、水中を泳ぎまわる。残念ながらタバコが吸えないし、野良魚に首を噛み切られる危険もある。「おれ」は水中都市の風景を眺め、魚になるくらいなら消えてなくなる方がいい、と思う。

 

 

【水浴】

★1a.水浴する天女などの衣を隠す。

『近江国風土記』逸文  天女の八人姉妹が白鳥となって降り、伊香の小江(余呉湖)で水浴をする。伊香刀美(いかとみ)という男がこれを見、白い犬を遣わして末娘の羽衣を盗み取らせる。伊香刀美は彼女を妻とし、二人の間に男児二人、女児二人が生まれる。しかし後に、天女は羽衣を探し出し、夫と子を残して天に昇った。

*妻が虎の皮を着て、夫と子を残して走り去った→〔虎〕7の『河東記』(唐・作者不詳)7「山林を慕う妻」。 

『丹後国風土記』逸文「奈具社」  比治山の頂の真奈井に、天女八人が降りて水浴をする。和奈左の老夫・老婦が、一人の天女の衣を隠す。天へ昇れなくなった乙女に、老夫婦は「われらの児となれ」と言い、家に連れ帰る→〔追放〕1c

『天人女房』(日本の昔話)  男が水浴する天女の羽衣を隠し、天女と結婚して子供もできる。ある時、天女は羽衣を見つけ出し、子供をかかえて天へ帰った(香川県三豊郡)→〔九百九十九〕5

『バーガヴァタ・プラーナ』  ゴーピー(牛飼いの娘)たちは皆、「クリシュナを夫にしたい」と願っていた。ある日、娘たちが全裸で川遊びをしていると、クリシュナは彼女たちの衣服を奪い、樹の上に登った。そして「皆、裸のまま川から出て、手を合わせ、頭を下げて拝め。そうしたら衣服を返してやる」と言った。娘たちは言われるとおりにしたが、それでも彼女たちは恨むことなく、クリシュナを慕った。

『火の鳥』(手塚治虫)「羽衣編」  未来世界の女が、十世紀の三保の松原へやって来る。女は、浜の美しさ清らかさに感動し、衣を松にかけて泳ぎたわむれる。漁師ズクが女の衣を隠して「三年間だけ夫婦になってくれ」と請い、「三年たったら衣を返すから、天へ帰るがいい」と言う。ズクと女は夫婦になり、娘が一人生まれる→〔時間旅行〕2b

*→〔飛行〕3の『今昔物語集』巻11−24は、男が水浴する女と結婚する物語の変型。

*河で泳ぐ半裸の女たちを、計略を用いて見る→〔時計〕5の『吾輩は猫である』(夏目漱石)11。

★1b.温浴する女妖の衣を奪う。

『西遊記』百回本第72回  女の妖精七人が三蔵法師を捕え、あとで蒸して食うつもりで洞の中に吊しておき、濯垢泉へ湯浴みに出かける。あとをつけた孫吾空は鷹に姿を変え、妖精たちの脱ぎ捨てた着物を、一枚残らずさらって行く。

★2.人妻の水浴を見る。

『サムエル記』下・第11章  ある日の夕暮れ時、ダビデ王は王宮の屋上から、人妻バト・シェバ(バテシバ)が水を浴びているのを見る。バト・シェバはたいそう美しかったので、ダビデ王は彼女を寝所に召し、彼女は子を宿す。ダビデ王は、バト・シェバの夫ウリアを戦場に送って戦死させる→〔手紙〕2a

 *『ほらふき男爵の冒険』(ビュルガー)「男爵の物語の再開」では、ミュンヒハウゼン男爵が「ワガハイはバト・シェバの末裔だ」と主張する。「ダビデとバト・シェバが離婚した時、バト・シェバは、ダビデとの間に生まれた幾人かの子供のうち、お気に入りの息子一人だけを連れてエジプトへ去った。その息子の直系の子孫がワガハイなのだ」。 

『ダニエル書への付加』(旧約聖書外典)  人妻スザンナが庭園で水浴する。裁判人である二人の長老が彼女に情欲を抱き、その姿をのぞき見て情交を迫る。スザンナが拒絶するので、二人の長老は「彼女が若者と姦淫した。我々はその男を取り押さえようとしたが、逃げ去った」と人々に言い、スザンナを死罪にしようとたくらむ。

★3.女神の水浴を不用意に見てしまうと罰せられる。

『変身物語』(オヴィディウス)巻3  狩りに出たアクタイオンは、山の泉で水を浴びる処女神ディアナ(アルテミス)の裸身を見る。怒ったディアナが水をすくってかけると、アクタイオンは鹿に変わり、自分が飼っている猟犬たちに喰い殺される〔*『ギリシア神話』(アポロドロス)第3巻第4章に簡略な記事〕。

*白狐の湯浴みを見て殺される→〔温泉〕9の『白狐の湯』(谷崎潤一郎)。 

★4a.行水する女を見る。水浴する女とそれを見た男が性関係を結ぶ物語の変型。

『好色一代男』巻1「人には見せぬ所」  仲居女が、盥(たらい)で行水のついでに自慰をする。九歳の世之介が、屋根の上から遠眼鏡で、そのありさまをのぞき見る。世之介はその夜、仲居女の部屋へしのび入って口説く。しかし九歳では色事はできず、仲居女は世之介を懐に抱いて、乳母のもとへ届けた。

★4b.行水する女の物語を、俳句的世界へ転換する。

『吾輩は猫である』(夏目漱石)6  水島寒月が「俳劇(俳句趣味の劇)」の脚本を創る。「舞台中央に柳の木を植え、枝へ烏を止まらせる。下に盥があり、美女が行水をしている。高浜虚子が通りかかり、この情景を見て、『行水の女に惚れる烏かな』と吟ずる。そこで拍子木を入れ、幕を引く」。苦沙弥先生や迷亭たちにこの脚本を披露するが、あまりに短くて劇の体をなしていないので、不評だった。 

★4c.行水する母親が変身する。

『捜神記』巻14−17(通巻356話)  宋士宗の母が、夏の日浴室で行水をした。長時間出てこないので家人がのぞき見ると、母はすっぽんに化していた〔*同・巻14−16(通巻355話)・巻14−18(通巻357話)は、ともに、行水する母が亀に変わる話〕。

★5.水浴びする男を見る。

『チャタレイ夫人の恋人』(ロレンス)第6章  コニー(コンスタンス)は、夫クリフォード卿からの命令を伝えに、雇い人である森番メラーズの家まで行く。メラーズはコニーの来訪に気づかず、裏庭で裸になって水を浴び、石鹸で身体を洗っていた。コニーは、思いがけぬものを見た驚きを子宮で受け止め、あわてて森の方へ逃げた〔*やがてコニーは、メラーズと関係を重ねるようになる〕。  

★6.海岸の少女を、中年男が見る。

『ユリシーズ』(ジョイス)第2部13「ナウシカア」  夏の夕暮れ時、三十八歳のレオポルド・ブルームは、海岸で遊ぶ三人の少女のうちの一人、十八歳ほどのガーティ・マクダウエルに目をとめる。ガーティはブルームの視線を感じ、好もしい男性だと思って、ブルームとの恋愛を夢想する。ブルームはガーティを見ながら、片手をズボンのポケットに入れ、自慰を始める。岩にすわっていたガーティは姿勢を変えて、下着をブルームに見せる。

*夕暮れ時、湖のほとりの美女を、王子が見る→〔夜〕1の『白鳥の湖』(チャイコフスキー)第2幕。 

 

 

【頭痛】

 *関連項目→〔歯痛〕

★1.頭痛と蛇。

『今昔物語集』巻3−11  釈迦族の男が国王となり、龍宮の王の娘を后に迎える。后はふだんは人間の姿をしていたが、眠る時と性交の時には、后の頭から蛇の頭が九つ出て、舌なめずりをした。国王は気味悪く思い、蛇の頭をすべて切り捨ててしまう。そのため国王の子孫である釈迦族の人々は皆、絶えず頭痛に苦しむようになった。

『百物語』(杉浦日向子)其ノ25  京に大雹が降った時のこと。ある寺の妻女が頭痛に苦しみ、額のあたりを揉んでいた。指先に何かがヌルリと触れるので、払いのけると小さな黒蛇だった。空から一すじの黒雲が降りて来て、蛇をすくい、天へ昇って行った。たちまち大雹は止み、妻女の頭痛も治った。

★2.院(法皇)の頭痛の原因。

『古事談』巻6−64  花山院の前世は尊い行者だった。前生の髑髏が、大峰の谷底の岩間に落ちてはさまっているので、花山院は頭痛を病み、雨の時には特に苦しまれた。安部晴明の教示により、谷底から髑髏を取り出したところ、花山院の頭痛は完治した。

『三十三間堂棟由来』  白河法皇の前世は修行僧蓮華王坊だった。前生の髑髏が紀州山中の柳の枝に引っかかっているので、法皇は頭痛に苦しんだ。熊野権現のお告げによれば、三十三間堂を建立して髑髏を納めれば、法皇の頭痛は治るはずであった。

『雑談集』(無住)巻10−1「梵字功徳ノ事」  後白河院は、久しく頭痛を病んでいた。院は前世に三井寺法師で、墓所にある前生の髑髏に松の根がまつわっているため頭が痛むのだ、との夢告を得て、松の根を切り捨てると病悩は癒えた。

*前世の骸骨を見る→〔前世〕6aの『えんの行者』など。

★3.再発する頭痛。

『三つの髑髏』(澁澤龍彦)  頭痛を病む花山院は、安倍晴明の教示で、自らの前生(小舎人)の髑髏、前々生(後宮の女房)の髑髏、前々々生(大峰の行者)の髑髏を、捜し出して供養した。頭痛はいったんは治まるが、やがてまた再発する、ということを繰り返す。安倍晴明は、花山院の前々々々生を告げる。「わが君の前々々々生は、本朝第六十五代の天皇であらせられました」〔*本朝第六十五代の天皇は花山院である〕。

★4.頭痛の原因が「前世の自分」ではなく、現世の「第二の自分」。

『私という他人』(クレックレー+セグペン)第3章  若い人妻イヴ・ホワイトが頭痛の治療のため、精神科医を訪れる。すると彼女の第二人格イヴ・ブラックが出現し、医師に説明する。「彼女(イヴ・ホワイト)は、あたし(イヴ・ブラック)の存在を知らない。彼女は無意識のうちに、あたしの活動を抑えようとする。それがうまくいかないと、ひどい頭痛を起こすのよ」〔*イヴ・ブラックが現れている間、イヴ・ホワイトは意識喪失の状態にある〕。

★5.頭痛を動物に移して治す。

『金枝篇』(初版)第3章第13節  ムーア人は頭痛が起こると、仔羊か山羊を捕らえ、これを倒れるまで打ち据えることがある。こうすれば頭痛がこの動物に移し替えられる、と彼らは信じている。

*頭痛を咒(まじない)で治す→〔病気〕5の『寒山拾得』(森鴎外)。

 

 

【鼈(すっぽん)】

 *関連項目→〔亀〕

★1.鼈に喰いつかれる。

『東海道中膝栗毛』(十返舎一九)2編上「三島」  三島宿の手前で、二〜三人の子供が大きなすっぽんをつかまえて遊んでいた。弥次・喜多は、子供たちからすっぽんを買い取り、藁苞(わらづと)に包んで、「今夜、宿屋で食べよう」と提(さ)げて行く。ところが、夜、彼らが女郎と寝ている間に、すっぽんは藁苞を食い破って這い出し、弥次郎兵衛の指に噛みついたので、大騒ぎになる。翌朝、喜多八は「よね(女郎)たちと寝たる側(そば)には泥亀(すっぽん)も恥づかしいやら指をくはへた」と狂歌を詠んで、弥次郎兵衛をからかった。

★2.三足の鼈。

『和漢三才図会』巻第46・介甲部「能鼈(みつあしのすっぽん)」  明代の『本草綱目』に言う。昔、ある人が三足の鼈を手に入れ、婦(つま)に命じて烹(に)させ、食べ終わって臥した。しばらくすると、その人は形を失い血水と化して、髪だけが残った。隣人は「婦が夫を謀殺したか?」と疑い、官に訴えた。知県の黄廷宣が婦を尋問したが、要領を得ないので、もう一度、婦に三足鼈を烹させて、死刑囚に食べさせる。すると彼も血肉になってしまった。 

★3.亀と鼈の遊び。

『暗夜行路』(志賀直哉)後篇第四の5  小学生時代、要(かなめ)は、従妹の直子と近所の女の児を誘って、「亀と鼈」という遊びをした。円硯(まるすずり)を庭に隠しておき、子供役の女の児がそれを探し出す。女の児は障子の外から「お母さん、亀を捕りました」と言い、お母さん役の直子が「それは亀ではありません」と答える。その時、要が大きな声で「鼈(すっぽん)」と怒鳴る、という遊びだ。この遊びは下男から教えられた。その卑猥な意味は、要にだけはいくらかわかっていた。三人は幾度かこの遊びを繰り返した。 

*後に要は直子を犯す→〔暴行(人妻を)〕2の『暗夜行路』。

★4.人面鼈身の怪物。

『和漢三才図会』巻第46・介甲部「和尚魚」  西海の大洋中に海坊主がいる。身体は鼈、人面で頭髪がない。大きなもので五〜六尺。漁人は「海坊主を見るのは不祥」とする。捕らえて殺そうとすると、海坊主は両手を胸の前に組み、泪を流して救いを乞う。「助けてやるから、今後、私の漁を妨げるな」と言うと、了承のしるしに西へ向かい天を仰ぐ仕草をする。いわゆる和尚魚とはこれである。 

 

※行水する母が、すっぽんに化す→〔水浴〕4cの『捜神記』巻14−17(通巻356話)。

 

 

【すばる】

★1.一つの星が六つに割れて、すばる星(プレアデス星団)になった。

『プレアデスの起源』(ポリネシア、クック諸島の神話・伝説)  プレアデス星団は、最初は一つの星だった。しかし、あまりにも明るかったために、タネ神の怒りをかった。タネ神は「プレアデスを追い払え」と、アウメア(おうし座のアルデバラン)とメレ(おおいぬ座のシリウス)に命ずる。プレアデスは川に隠れるが、メレが川の水をかき出した。タネ神はプレアデスを追いつめ、アウメアを投げつけたので、プレアデスは六つに割れてしまった。

★2.すばる星は、もとは七つ星だった。

『イワンノチュウ ―― 六つ星』(アイヌの神話・伝説)  ある夫婦に娘が七人、息子が三人いた。娘たちはなまけ者で、「私たちは星になりたい。星なら何もしなくていいから」と言った。カムイ(アイヌの神)は七人を小さな星に変え、一年の畑仕事が終わって寒い冬が近づく頃、空に昇ってくるようにした。七人のうち、いちばん若い娘は恥じて両手で顔を隠した。そのため、七つ星の一つは姿を消して六つ星になった。これがすばる星で、イワンノチュウ(イワン=六、ノチュウ=星)と呼ばれている〔*三人の息子たちは、オリオン座の三つ星になった〕。

『クリッティカ ―― プレアデス星団』(インドの神話・伝説)  クリッティカ(すばる星)は、肉眼では七つの星(アンバ、デュラ、ニタツニ、アブラヤンティ、メガヤンティ、バルシャヤンティ、チュプニカ)が見分けられる。これらの星は、七賢人サプタリシ(サプタ=七、リシ=賢人)すなわち北斗七星の、それぞれの妻である。後に七番目の星チュプニカが消えたため、クリッティカは六つ星になった。

*七人の童子=すばる星→〔海〕11の『丹後国風土記』逸文(水の江の浦の嶼子)。

*『今昔物語集』巻7−6に現れる六人の天童子も、すばる星かもしれない→〔船〕11

★3.六人兄弟がすばる星になった。

『金星とプレアデス星団の誕生』(モンゴルの神話・伝説)  空を飛ぶ魔法、透明人間になる魔法など、それぞれ特技を身につけた六人兄弟が、一人の美しい王女との結婚を巡って言い争う。王女は「争うのはやめて下さい。私たちは皆、空の星になりましょう。私は金星に。あなたたちはプレアデス星団に。そうすれば一年に一度、会うことができます」。金星がプレアデス星団のそばで輝く時、モンゴルの人々はこの物語を思い出し、「今、美しい王女が六人の兄弟たちに会っているのだな」と想像する。

★4.六人姉妹がすばる星になった。

『日本の星 星の方言集』(野尻抱影)「アイヌの星」(スバル)  なまけ者の六人姉妹がおり、春夏は山で遊び暮らし、秋になると里へ下りて、食物をもらって過ごしていた。これを見た天の神は、六人を星に変えて寒空にさらすことにした。以後、彼女たちは冬になると天に現れ、暖かくなると暗黒の地下で暮らさなければならぬようになった。

★5.すまる=すばる。

『星の神話・伝説集成』(野尻抱影)「すばる星」  「天の安の河の誓(うけ)ひ」で、スサノヲが姉アマテラスから八尺(やさか)の勾玉の五百津(いほつ)の御統之珠(みすまるのたま)を受け取り、噛みに噛んで吹き出す。その息の霧から、いろいろの神たちが生まれ出る(*→〔川〕1の『古事記』上巻)。もし、この御統之珠の六つが天に集まって「すまる(すばる)星」に化した、というような神話があったら、どんなにすばらしいだろう。否、ことによったら、「すまる」が星の名となったのも、この種の神話からではなかったろうか、とも空想する。

 

※昴宿(すばるぼし)と畢宿(あめふりぼし)の間にある「灯明の郷(くに)」→〔旅〕3aの『本当の話』(ルキアノス)。

 

 

【相撲】

★1.相撲の起源。

『日本書紀』巻6垂仁天皇7年7月  當麻邑(たぎまむら)の當摩蹶速(たぎまのくゑはや)は力自慢で、「自分に及ぶ者はない」と豪語していた。垂仁天皇が出雲国から野見宿禰(のみのすくね)を呼んで、當摩蹶速と相撲を取らせる。二人は蹴り合い、野見宿禰が當摩蹶速のあばら骨と腰骨を踏み砕いて殺した。

★2.相撲の勝ちをゆずる。

『稲妻大蔵』(日本の昔話)  諫早の稲妻大蔵という相撲取りは、天狗様の申し子ゆえ負け知らずで、とうとう日本一の大力士になった。ある年の晴れの勝負の前に、相手の力士がいろいろと頼むので、稲妻大蔵は憐れみの心を起こし、たった一度だけ勝ちを譲ってやった。すると、たちまち天狗が稲妻大蔵の身を離れて、それからは急に弱い力士になってしまった(肥前国北高来郡)。 

★3.相撲取りになりそこね、ばくち打ちの渡世人に身をもちくずす。

『一本刀土俵入』(長谷川伸)  一文無しの取的(とりてき。最下級の力士)駒形茂兵衛は、取手の宿の酌婦お蔦から、路用の銭や、櫛・簪を与えられ励まされて、「必ず横綱になり、土俵入りを見てもらう」と誓った。十年後。茂兵衛は相撲取りではなく、渡世人姿で宿場へやって来る。彼は十年前の礼を言おうと、お蔦を訪ねるが、お蔦は夫辰三郎がいかさま博打をしたために、窮地に陥っていた。茂兵衛はお蔦たちを逃がし、彼らを追う博徒どもを叩きふせて、「これが駒形の、しがねえ姿の土俵入りでござんす」と言う。

★4a.女の相撲。

『日本書紀』巻14雄略天皇13年(A.D.469)9月  木工・猪名部真根(こだくみ・いなべのまね)は、石を台とし、斧をふるって木材を削り、終日作業しても刃を傷つけることがなかった。真根は雄略天皇に向かって「けっして失敗しません」と豪語したので、天皇は、采女たちをふんどし姿の裸にして、真根の前で相撲をとらせる。真根は采女を見つつ作業をし、手もとが狂って刃を傷つけてしまった。天皇は真根を咎め、処刑しようとした→〔歌の力〕7。   

★4b.女子プロレス。

『カリフォルニア・ドールズ』(アルドリッチ)  アイリスとモリーの女子プロレス・タッグチーム「カリフォルニア・ドールズ」が、メジャーを目ざし、地方都市を転戦する。マネージャーのハリーが、彼女たちを「美人レスラー」として売り込もうとするが、興行主は「客が見るのは胸と尻だけだ」と言った。日本人タッグ(ミミ萩原とジャンボ堀)との試合では、回転逆海老固めをかけられて苦戦した。アイリスとモリーは回転逆海老固めを修得し、黒人チャンピオンタッグ「トレドの虎」を激闘の末に破って、栄光の座についた。

★5.「老齢」との相撲。

『ギュルヴィたぶらかし(ギュルヴィの惑わし)(スノリ)46〜47  ウートガルザ=ロキ王の巨人国を訪れたトールは、老婆エリ(ロキ王の乳母)と角力(すもう)をとる。エリは意外に強く、トールは片膝をついてしまった。実はエリ=老齢で、老いには誰も勝てないのだった。   

 

※人間と河童の相撲→〔河童〕4の河童相撲の伝説など。

 

 

【すりかえ】

★1.金と石のすりかえ。

『東海道中膝栗毛』(十返舎一九)2編上〜下「三島」  三島の宿で、弥次郎兵衛は指をすっぽんに喰いつかれ、「アイタタタタタタ」とうろたえ騒ぐ(*→〔鼈(すっぽん)〕1)。その間に、ごまのはえ十吉(じゅうきち)が、弥次郎兵衛の胴巻から金を盗み、石ころを紙に包んだものとすりかえて逃げる。金をなくした弥次・喜多二人は、所持品を売って一時をしのぎ、静岡の知り合いを訪ねて、金を用立ててもらう。

『椀久末松山』上  椀久(商家の道楽息子・椀屋九兵衛)が、為替の金五十両を石瓦とすりかえて、父久右衛門に渡す。久右衛門は財布の上から手さぐりして金でないことを知るが、だまって受け取り、翌日椀久が豪遊している座敷に乗りこんで、そのことを暴露する。大勢の前で椀久に恥をかかせ、彼を改心させようとしたのである。

*小判と見えたのは砂利だった→〔金貨〕5の『とっこべとら子』(宮沢賢治)。

★2.手紙のすりかえ。

『盗まれた手紙』(ポオ)  身分ある夫人が愛人からの手紙を読んでいる時、夫が入って来たので、手紙を隠そうとテーブルに置く。大臣がそれを他の手紙とすりかえて持ち去り、夫人を脅迫する。探偵デュパンがその手紙を、イミテーションとすりかえて取り戻し、夫人を救う。

★3.剣のすりかえ。

『伊勢音頭恋寝刃(いせおんどこいのねたば)三幕目「古市油屋の場」  福岡貢(みつぎ)が名刀青江下坂(あおえしもさか)を持って油屋に登楼し、料理人喜助に下坂を預ける。悪人徳島岩次が、鞘はそのままに、自分の刀と下坂の刀身とをつけかえる。それを見た喜助は、岩次の刀(中身は下坂)を貢に渡して帰す。しかし貢は「刀を取り違えた」と思って油屋へ戻る。貢は刀に魂を奪われたかのような状態になって、遊女たちや岩次一味を次々に斬り殺す。

『成上り』(狂言)  太郎冠者が、主(あるじ)の太刀を持ったまま眠る。すっぱ(盗人)が太刀を盗み取り、代わりに竹杖を太郎冠者に持たせておく。目覚めた太郎冠者は驚くが、「物の成り上がると申す話がござる」と主に言って、山の芋が鰻になる、太刀が蛇になる(*→〔蛇と剣〕2)、などの例をあげ、「こなたのお太刀が変じて竹杖になりました」と述べて、ごまかそうとする。

『南総里見八犬伝』第3輯巻之2第24回  大塚蟇六は浪人網乾左母二郎に依頼して、犬塚信乃の所持する足利家の宝刀村雨を、別の刀とすりかえさせる。ところが左母二郎は村雨を自分のものとし、蟇六にはまた他の刀を渡す。蟇六はそれを本物の村雨と思って陣代簸上宮六に献上し、斬殺される。

『平治物語』下「頼朝生捕らるる事」  平清盛が源氏重代の名剣「髭切」を求めた時、奥波賀の長者大炊は別の剣を「髭切」と称して献上した。清盛が源頼朝に「たしかに髭切か?」と尋ね合わせると、頼朝も「髭切にて候」と答えて、清盛を欺いた。

*芝居用の刀が本物の刀にすりかわっていることを知らず、切腹してしまう→〔芝居〕5bの『半七捕物帳』(岡本綺堂)「勘平の死」。

*甥が大名屋敷の刀を安物とすりかえ、叔母が責任をとって切腹する→〔切腹〕2の『長町女腹切』(近松門左衛門)。

★4.平中説話には、香を排泄物にすりかえる話と、逆に、排泄物を香にすりかえる話の両方がある。どちらか一方の話がまずあって、それを変形させてもう一方の話が出来上がったのであろう。

『古本説話集』上−19  色好みの平中(平定文)は、良い香りのする丁子(ちょうじ)を口に含んで、女を口説いていた。彼の妻がこれを憎み、畳紙の中の丁子を鼠の糞とすりかえた。女のもとから帰った平中は心地悪し気で、唾を吐き、臥した。

『今昔物語集』巻30−1  平中は、本院の大臣に仕える女房侍従の君に懸想したが、彼女は平中になびかなかった。平中は、侍従の君の排泄物を見ることによって、彼女への恋情を断ち切ろうと考え、彼女の汚物の入った筥(はこ)を奪う。侍従の君は事前にそれを察知し、排泄物の代わりに香を入れておいた。平中は、筥の中身を口に入れ、それが丁子の煮汁と黒方であることを知る。やがて平中は病気になって死んだ〔*『好色』(芥川龍之介)の原話〕。

*平中が侍従の君の筥を開けて死ぬのは、浦島太郎が乙姫様からもらった玉手箱を開けて死ぬ物語と、どこかでつながるのかもしれない→〔箱を開ける男〕1

★5.水と墨とのすりかえ。

『古本説話集』上−19  平中は水を入れた硯瓶を隠し持ち、水で眼をぬらしつつ、方々の女を口説いていた。ある時、平中の妻が水の代わりに墨を入れておいたので、平中の顔も袖も真っ黒になった。

『墨塗』(狂言)  在京の大名が故郷へ帰ることになり、愛人の女に別れを告げる。女は茶碗の水で目をぬらし、大名との別れを悲しむふりをする。それを見た太郎冠者が、茶碗の水を墨とすりかえたので、女の顔は真っ黒になった。女は怒り狂い、大名や太郎冠者の顔にも墨を塗りつける。

*女が白粉(おしろい)のつもりで、掃墨(はいずみ)を顔に塗る→〔取り違え〕1の『堤中納言物語』「はいずみ」。

★6.酒と毒のすりかえ。毒と酒のすりかえ。

『僧正殺人事件』(ヴァン・ダイン)  老教授ディラードは連続殺人を犯し、その罪を養子のアーネッソンに着せる。さらに、最後にアーネッソンが服毒自殺したように見せるため、彼のワイングラスにひそかに青酸を入れる。それを見た探偵ファイロ・ヴァンスは、アーネッソンのグラスとディラードのグラスをすりかえる。ディラードはすりかえに気づかず、青酸を飲んで死んでしまった〔*→〔自縄自縛〕3の、自らの用意した殺人具にかかって死ぬ物語の一種〕。

『魔術師』(江戸川乱歩)「八対一」  殺人鬼奥村源造は、明智小五郎に追いつめられ、「もはや、これまでだ。生き恥をさらしたくない」と考え、かねて用意の毒薬の瓶を飲みほす。しかし明智が中身をシャンパンと入れ替えておいたので、源造は死ぬことができなかった〔*やむなく源造は、舌を噛み切る〕。

★7.文書のすりかえ。

『氷点』(三浦綾子)「答辞」  陽子が中学校の卒業式で、総代として答辞を読むこととなった。陽子を「殺人犯の子」と思う母夏枝は、陽子が奉書紙に清書した答辞を白紙とすりかえる。陽子は式場で白紙を見て驚くが、父兄や来賓に、答辞が白紙になっていたことを告げて詫び、自分の言葉で答辞を述べる。

『水鏡』下巻  称徳女帝の没後、宰相大市(天武天皇の孫)が位を継ぐことに決まった。ところが藤原百川、永手、良継たちが、「白壁王(天智天皇の孫)を即位させたい」と画策し、「宰相大市即位」の宣命を隠してしまった。百川らは、ひそかに作っておいた「白壁王を太子と定める」由の宣命を宣命使に読ませ、白壁王を位につけた。これが光仁天皇である。

★8.貴重な品などを、悪人が別のものとすりかえる。

『怪談牡丹燈籠』(三遊亭円朝)12  萩原新三郎が、お露の霊を退けるために身につけていた海音如来像を、隣家の伴蔵が瓦の不動尊像とすりかえた。そのため、新三郎は命を失った。

『鏡山旧錦絵(かがみやまこきょうのにしきえ)「奥殿草履打」  中老尾上が預かる蒔絵の箱の中の蘭奢待を、局(つぼね)岩藤が草履の片方とすりかえた。その草履には岩藤の焼き印があり、さらに、もう片方の岩藤の草履が、尾上の部屋から発見された。そのため、尾上が岩藤の草履を盗んで、片方を蘭奢待の箱に入れ、もう片方を自室に隠した、と見なされた。岩藤はその草履で、尾上を打った→〔仇討ち(主君の)〕1

『半七捕物帖』(岡本綺堂)「一つ目小僧」  鳥屋喜右衛門が十五両もする高価な鶉の注文を受け、夜、武家屋敷へ鶉を届ける。一室で待たされていると、一つ目小僧が現れたので喜右衛門は気絶する。一つ目小僧は、片目の按摩少年が変装したものであり、喜右衛門が気を失っている間に、悪人たちが十五両の鶉を安物の駄鶉とすりかえた→〔化け物屋敷〕1

『義経千本桜』3段目「木の実」  若葉内侍らが茶店で休んでいる時、いがみの権太が自分の風呂敷包みと若葉内侍らの包みをすりかえて持ち去り、すぐ戻って来て「包みを間違えた」と言う。権太は自分の包みを受け取って調べ、「二十両がなくなっている」と言いがかりをつける。

 

※宝くじの当たり券と、はずれ券をすりかえる→〔宝くじ〕3のくじ引き券(ブルンヴァン『メキシコから来たペット』)。  

 

 

【すれ違い】

★1.慕い合う二人あるいは敵どうしが、お互いを目前にしながら会えない。

『君の名は』(菊田一夫)  昭和二十年(1945)十一月二十四日の夜八時、後宮春樹は再会を約束した数寄屋橋で、氏家真知子を待つ。しかしその二日前、真知子は伯父に連れられて東京を離れ、佐渡へ渡ってしまった。後、真知子は東京に戻り、春樹の勤める雑誌社を訪れるが、そのわずか十分前に、春樹は編集長と口論して辞職し、社を去ったところだった。その後も二人はすれ違いを繰り返し、なかなか逢うことができない〔*小説は昭和二十八年(1953)までのことを描くが、最後まで、春樹と真知子は肉体的には結ばれない〕。

『桜姫東文章』「三囲堤」  清玄と桜姫とは、お家騒動の争いの混乱の中で、離れ離れになった。清玄は桜姫の産んだ赤子を抱いて、姫を捜し歩く。桜姫は「我が児に逢いたい」と神仏に祈る。二人は三囲堤で偶然行き合うが、暗闇の中ゆえ、お互いをそれと気づかず、別れてしまう。

『ジャン・クリストフ』(ロラン)第4巻「反抗」〜第6巻「アントアネット」  ドイツの小さな町の劇場で、ジャン・クリストフとアントアネットは出会った。数日後、クリストフの乗る列車とアントアネットの乗る列車が、駅で偶然すれ違う。数分の停車時間に、二人は見つめ合う。後、パリに出たクリストフは、雑踏の向こうにアントアネットを見る。アントアネットもクリストフに気づく。しかし群集や馬車に妨げられて、互いを見失う。アントアネットはクリストフが優れた音楽家であることを知り、思慕するが、彼女はまもなく肺結核で死んだ〔*アントアネットの弟オリヴィエがクリストフと親交を結ぶ。しかしオリヴィエも死ぬ〕→〔幽霊(人につく)〕2。  

『大菩薩峠』(中里介山)  宇津木兵馬は兄の仇机龍之助を追って、諸国を旅する。しかし、たまたま対面してもお互い気づかないとか、兵馬が龍之助の滞在地を訪れた時、一足先に龍之助は立ち去ったところだったなどで、ついに対決の機会を得ないまま、物語は途切れる。

★2.一瞬のすれ違い。

『不如帰』(徳冨蘆花)下編8の2  陸軍中将子爵片岡毅の娘浪子は、海軍少尉男爵川島武男と結婚して睦まじく暮らすが、結核に侵され、武男の母によって離縁された。浪子は保養のため関西へ旅行し、その帰途、山科の駅ですれ違った列車の窓に、思いがけず夫武男の姿を見る。浪子は手に持ったすみれ色のハンケチを投げ、武男はそのハンケチを狂うがごとく振って呼びかける。それが二人の最後の出会いで、まもなく浪子は死んだ。

 

※夫が妻に和解の電話をかけるが、その直前に、妻は夫を殺すための猟銃を持って家を出たため、話し合えなかった→〔電話〕3の『柔らかい肌』(トリュフォー)。

 

 

【寸断】

★1.殺した怪物の蘇生・復活を防ぐため、死体を寸断して、諸方に分葬する。

鬼八(きはち)と御毛沼命の伝説  高千穂地方の異族の首領に走建(はしりたける)という者がおり、後世、鬼八(きはち)と呼ばれた。神武天皇の兄御毛沼命(みけぬのみこと)が征伐したが、寸断した鬼八の死体は一夜のうちに接合し、もとどおりになった。そこで、あらためて死体の断片を日向・肥後の各地に分葬した(宮崎県西臼杵郡高千穂町)。

*死体の首と胴体を離して、復活を防ぐ→〔首〕5aの『黄金伝説』119「洗者聖ヨハネ刎首」など。

*死体を焼いて灰にしてしまえば、生き返れない→〔灰〕3の『伊賀の影丸』(横山光輝)「若葉城の巻」〜「由比正雪の巻」。

★2.以下の例も、復活を防ぐために死体を寸断した可能性がある。

『イシスとオシリスの伝説について』(プルタルコス)8・18  テュポン(セト)は、兄オシリスを木の棺に入れてナイル河へ投げ込み、殺した。オシリスの妻イシスが嘆き悲しんで、棺を息子ホルスのもとへ運んだ。満月の夜、テュポンが一頭の豚を追っていたところ、棺を見つけた。中にオシリスの遺体があったので、テュポンはこれを八つ裂きにした(8)。あるいは、月光の下で狩りをしていたテュポンが、オシリスの遺体を見つけ、十四に切断してばらまいた(18)→〔性器(男)〕3

*一方に、「オシリスの遺体の切断という物語は、種を撒き散らすことの神話的表現かもしれない」(『金枝篇』(初版)第3章第9節)との見解もある。ハイヌウェレ神話と同様のもの、という解釈である→〔寸断〕5aのハイヌウェレの神話、→〔寸断〕5bの死体に生えた稲とトウモロコシの神話。

『ギリシア神話』(アポロドロス)第3巻第7章  ペロプスは、アルカディア王ステュムパロスと戦った時、友情を装って彼を殺し、その身体を八つ裂きにしてまき散らした。そのためギリシアは不作におそわれた。

『ギリシア神話』(アポロドロス)第3巻第13章  ペレウスはイオルコスを破壊した折に、アカストスの妻アステュダメイアを殺し、その四肢を八つ裂きにした。そして彼女のバラバラ死体の間を通って、軍を市中に導いた。

『古事記』上巻  スサノヲはヤマタノヲロチを酒で眠らせ、十拳剣(とつかのつるぎ)をふるって、ずたずたに斬った(原文は「切散(きりはふる)」)〔*『日本書紀』巻1・第8段本文は「寸斬(つだつだにきる)」。一書では「寸」の字は使われない〕。

『俵藤太物語』(御伽草子)  俵藤太は強弓で大百足を射殺(いころ)した。そして、「なおも仇をなすことがあるかもしれぬ」と用心し、大百足の死骸をずたずたに斬り捨てて、琵琶湖の水に流した。

『日本書紀』巻21崇峻天皇即位前紀  捕鳥部万(ととりべのよろづ。物部守屋の従者)が、朝廷の衛士(いくさびと)と戦って大勢を殺した後に、小刀で自らの頸を刺して死んだ。朝廷は、「万(よろづ)の死体を八段に斬り、八つの国に分けて串刺しにせよ」と命じた。

*大蛇の死骸を八つに切り刻む→〔島〕7の為朝の蛇退治の伝説。

*河童の子を切り刻み、樽に入れて土に埋める→〔出産〕2の『遠野物語』(柳田国男)55。

*姉が弟を八つ裂きにして海に捨て、父が死体を拾っているうちに逃げ去る→〔逃走〕1の『ギリシア神話』(アポロドロス)第1巻第9章。

★3.死体処理法としての寸断。バラバラ殺人の極端な形態。

『英雄伝』(プルタルコス)「ロムルス」  ロムルスはローマの王となってから三十八年目、五十四歳の時に、突然どこへともなく姿を消した。「神々の所へさらわれたのだ」と人々は考えた。しかし次のように推測する人もいた。すなわち、元老院議員たちが反乱を起こして神殿でロムルスを殺し、死体を刻んで、その各片を皆が衣服のひだに隠して、運び出したのではないか、というのである。

★4.返り血のついた衣服の処理法としての寸断。細かく切り刻んで捨てる。

『砂の器』(松本清張)  和賀英良が三木謙一を殺した時、返り血がスポーツシャツに着いた。和賀の愛人リエ子がそのシャツを細かく切り刻み、中央線の汽車の窓から、まき捨てた。乗客の一人がリエ子のふるまいに興趣を感じ、「紙吹雪の女」という随筆が雑誌に載った。それを読んだ今西刑事は、「紙ではなく布切れかもしれない」と思った。

★5a.女神の死体が寸断され、そこから食物が生ずる。

ハイヌウェレの神話  夢告によってアメタが、椰子の木から生まれ出た少女ハイヌウェレを育てる。成長したハイヌウェレは、祭りの夜に村人たちに殺され、アメタは死体を多くの断片に切り刻んで、土に埋める。埋められた死体の各部分からはいろいろな種類のヤム芋が生じ、ウェマーレ族の主食になった(インドネシア・セラム島のウェマーレ族の神話)。

*→〔漢字〕1の『南総里見八犬伝』第2輯巻之2第14回、伏姫が自害した時に八つの玉が八方に飛び去り、八犬士が生まれ出た、というのも、このタイプの物語と見ることができる。

★5b.子供の死体が寸断され、そこから食物が生ずる。

死体に生えた稲とトウモロコシの神話  神が最初の人間を竹から発芽させた。男女一対で、子供が一人できた。その頃、食物は木の実だけで、彼らは飢えていた。神は「二種類の良い食物を与えよう。子供を殺し、死体を切り刻んで畑に播け」と、男に夢告した。男が言われたとおりにすると、畑から稲とトウモロコシが生じた(フローレス島、マンガライ族)。

★6.女の死体が寸断され、そこから大勢の女が生ずる。

『なぜ神々は人間をつくったのか』(シッパー)第7章「最初に女がいなかった場合」  男たちが、一人の女を自分のものにしようと争い(*→〔水鏡〕4)、女を殺して細かく切り刻んだ。男たちはそれぞれ肉片を選んで葉に包み、家に持ち帰って、草で編んだ壁に肉片を押し入れた。それから皆、狩りに出かけ、家に戻ってみると、肉片はすべて女になっており、どの男も妻を持つことができた(ブラジル、シェレンテ族)。

 

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